実践教育訓練研究協会の理事に就任させていただいております石丸です。
大学においても、ものづくり経営研究センターやものづくりの中核を担う人材育成事業など「ものづくり」を教育の一環とした取り組みのプログラムが始まろうとしていますが,教育現場に生産現場の生産システムを持ち込むことは,実践の指導や設備環境面など現状では難しく、早期には教育効果が望めないと見られます。
私が所属する建築・デザインの分野でも、ものづくり人材増への職業教育の充実の要望が生産現場からありながら、官から民への動きの中で能力開発機関や工業高校において廃科や統合化が進み、民間で細々と人材育成がなされている現状があります。
日本のものづくりが危機に直面している現況の中で,官民一体化した教育訓練施設の充実が望まれます、独立行政法人という合理化は逆の方向に向かっているようです。
私が見た中国では,彼の清華大学でも社会人のための社会人教育学院が大学に設置され、夜間2年制短大や4年制大学そして社会人全日制の職業教育が実施されております。それは重点大学である南京林業大学でも同じであり、多様な教育訓練が実施され、職業評価基準を定めた正規の教育機関として機能しています。
清華大学教授であった楊耀著『明式家具研究』の中で"日本吸収西方文化、較我国為早、然而対于本国固有芸術的優点、仍極保持、不使消失"とあります。その意味は「日本は西洋文化を中国より早く吸収したが、中国は固有の芸術の長所については、なお極力これを保持し、消失させなかった。」ということです。さらに"現代化的東西、不一定都是舶来品"「
近代化されたものとは、みな舶来品というわけではない。」とあり、中華思想が垣間見られるが、伝統的な芸術や文化など固有なものを大事にするという実践教育にあてはまる言葉です。
能力や個性にふさわしい多様な「教育と職業意義」を用意することは、若者の就業意識の高揚をまねき、ものづくりの人材増につながるものと確信します。東アジアの中で、ものづくりを商品とする日本の急を要する課題でもあります。その問題解決には先ず、技能と技能指導者の社会的評価を高めるしかありません。ものづくりの複雑性は理論を超えているからです。
(社)実践教育訓練研究協会 理事
建築・デザイン系専門部会長
福山大学工学部建築学科 非常勤講師
岡山大学教育学部 非常勤講師
九州大学 博士(芸術工学)
石 丸 進
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JISSEN NEWS 2006.春 No.151 |